科学の発見

img_de20f707265ab56d5a6d96cb62d465ec3313156.jpg 前にもちょっと触れた、ワインバーグ「科学の発見」について。

そんなにいろいろ読んだわけではないけれど、今まで読んだ科学史の本というのは、さまざまな危機(理論の矛盾点や説明不能の事象)がありつつも、その危機を克服しながら、進歩してきた歴史が描かれていた。 そして、それゆえに科学は、現在の到達点に向かって、順調に成長してきたという印象を持つ。

そのような科学史では、コペルニクス、ガリレイ、ケプラー、ニュートンと、逐次、真理に近づくのに貢献した人達の名前が出てきて、着実な科学の進歩が跡づけられる。

しかし、この本では、そうした時代を進めた人だけでなく、同じ対象について思索を深めながら、近代科学の発展には貢献しなかった人、あるいは時代を停滞させた人もとりあげられ、何故間違ったのか、どこで間違ったのかが考察されている。今まで名前も聞いたことがなかった人たちも多い。

業績をひろっているのが普通の科学史で、教科書的にまとまるけれど、これは、不業績もひろっている。
つまり、そうした科学史の知識は、人間の営み全般ではなくて、そのなかの成功した部分の歴史にすぎなかったというわけだ。

第一部 古代ギリシャの物理学
第一章まず美しいことが優先された
第二章なぜ数学だったのか?
第三章アリストテレスは愚か者か?
第四章万物理論からの撤退
第五章キリスト教のせいだったのか?
  
第二部 古代ギリシャの天文学
第六章実用が天文学を生んだ
第七章太陽、月、地球の計測
第八章惑星という大問題
  
第三部 中世
第九章アラブ世界がギリシャを継承する
第十章暗黒の西洋に差し込み始めた光
  
第四部 科学革命
第十一章ついに太陽系が解明される
第十二章科学には実験が必要だ
第十三章最も過大評価された偉人たち
第十四章革命者ニュートン
第十五章エピローグ:大いなる統一をめざして
そして名をなした、科学を進歩させた偉大な人に対しても、誤りについては厳しい。
なかでもデカルトなんて、物理学には何の貢献もしていない、数学だって座標の導入は画期的だが数学的真理として大した発見はしていないという。哲学者であると。

その時代の偉人だからといって、偉いとはいわない。
科学の評価は科学の尺度で行う。そしてその科学の尺度というのは、近代になってようやく確立したものである、したがって、現代科学の眼で過去の「科学」を評価する。

もちろん(科学的には間違った)認識が人間の歴史に与えた影響は無視できるものではないと思うから、文化史とか経済史というようなものなら別だろうけれど、真理を求めるのが科学であるなら、これが科学史的評価だろう。

本書では、数学は科学とは違うとも指摘している。
私もそうだと思う。
数学は数学のためにあると考えている私だけれど、やっぱり宇宙の真理は数学にはない。

数学と物理の違いについて、数学の授業ではこんなことも言っていた。

物理の人って微分方程式には解があることがアプリオリなんですよね。
数学では解の存在証明が大事なんだけど、物理屋にしてみれば、自然現象を記述しているのが方程式、それに解が存在しないなんて、自然現象が存在しないことになるのか、というわけです。

その一方、こんな話もある。

数学では、1/2乗のオーダーでも収束する近似式を発見したら立派な業績だけれど、物理ではそんな緩い近似式なんて、計算しても丸め誤差が累積するだけで何の意味もないでしょう。


それはともかく、数学においては科学とは異なり、神が介入する余地はない。
ある定理が成り立つということは、まさに神の御業だと喜ぶことはできるかもしれないが、神が作った公理系は存在しない。

本書では、古代ギリシア人は科学的真理ではなく、美を優先したと指摘する。
だから、彼らは、数学(哲学)では偉大な成果をあげたにもかかわらず、物理学では成果をあげなかった。
数学的思索の産物としては、音楽(ピタゴラス音律)では成果をあげたと思うけれど、悲しいかな、「美しくない」無理数を認めない(というか使おうとしない)から、ギリシア人は平均律にはたどり着きようがなかっただろう。

それにしても、世界は美しく見えて、実は結構歪んでいるわけだ。

真っ直ぐ、つまり真理と美が一致してたらこんなに紆余曲折はなかったかも。

誰の作品だったか忘れてしまったけれど、こんなSFショートショートを読んだ憶えがある:

宇宙は神様たちが作った。
神様たちは、分担して自分の持ち場の宇宙を創る。
ところが中に出来の悪い神様がいた。
その神様が作った宇宙は、空間は歪んでるわ、スペクトルは赤方に偏移しているわ、できそこないなのであった。

オチは忘れてしまったけど、こんな宇宙を「矯正」したら、中で暮らしている人間はどうなっちゃうんだろう。

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