男女差合憲判決

もうひとつ釈然としない。

izokunenkin_danjosa.jpg 遺族年金の受給要件の男女差、つまり、男が死亡したとき配偶者女性は年齢に関係なく遺族年金を受けられるが、女が死亡したとき配偶者男性は55歳以上でなければ受給できない、という制度が合憲という最高裁の判断。

遺族年金が高齢者でなければ受け取れないという趣旨なら、裁判所がいうように女性の置かれた状況から、受給要件を緩和したという理屈もあるのかもしれないけれど、遺族年金ってそういう趣旨だったのだろうか。

判決理由について、いじわるな読み方をしてみた。

夫が自分の死で妻が苦労すると心配するのは合理的だけれど、妻が自分の死で夫が苦労すると思うのは合理性がない。

とか、

多くの夫婦は夫のほうが年上で、平均余命から考えても、夫が先に死ぬから、残された妻が受給するという制度には、合理性がある。
つまり、標準的な夫婦と異なるなら、異なっているやつが悪い。そんなことを法は想定していない。


遺族年金の男女差「合憲」 最高裁が初判断
賃金格差踏まえ


 労災で配偶者を亡くした場合の遺族補償年金をめぐり、夫だけは55歳以上でないと受給できない規定が憲法違反がどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は21日、規定は合憲とする初判断を示した。「男女の賃金格差などを踏まえれば、(妻に手厚い)規定に合理性がある」と指摘した。
 合憲かどうかが争われたのは、1967年施行の地方公務員災害補償法の規定。妻は年齢を問わずに受け取れるため、妻を亡くした原告の堺市の男性(70)が、法の下の平等を定めた憲法に反するとして提訴した。
 同小法廷は判決理由で、男女間の労働人口の違いや平均賃金の格差、雇用形態の違いを挙げ、「妻の置かれている社会的状況に鑑みれば、妻に年齢の受給要件を定めない規定は合理性を欠くものではない」と判断した。裁判官5人の全員一致。男性の敗訴が確定した。
 民間や国家公務員の労災の遺族補償にも同様の年齢制限がある。
 2013年11月の一審・大阪地裁判決は「現在の一般的な家庭のモデルは共働き世帯で、配偶者の性別による差別的な扱いには合理性がない」とし、地方公務員災害補償基金(東京)による不支給の決定を取り消した。
 15年6月の二審・大阪高裁判決は男女間の賃金格差を理由に「夫を亡くした妻の方が、独力で生計を維持できなくなる可能性が高い」と指摘。規定は不合理な差別ではないとした。逆転敗訴した男性が上告していた。
 一、二審判決などによると、1998年、市立中学の教員だった妻(当時51)が自殺。男性は遺族補償年金の支給を申請したが、妻の死亡時点で男性が51歳だったため、受給要件の55歳に達していないとして支給されなかった。
日経 2017/3/21 23:27
前にも似たようなことがあった。
定年後の再雇用である。

定年後の再雇用で、職務内容が全く以前と変わらないのに給与が著しく下がるのは不法だという訴えに対し、一審は原告勝訴、二審の高裁で逆転敗訴した事件。

この事件については、もし同一労働同一賃金原則を徹底したら、そもそも定年後再雇用という、近年、広く行われつつある労働慣行自体が崩れるおそれがあるという社会的影響を考慮して、苦しいけれどなんとか理屈をつけたのだろうと思った。
(ただ現状追認ばっかりしていて良いのかという疑問は残るけど)


しかし、今回の事案は、裁判所が言うように、原告のようなケースは少数派だというのなら、原告勝訴でも社会的な影響はそんなに大きくなく、実物である年金基金の支給総額が著増するとかいうことはないのじゃないだろうか。
それなら、ここはエエカッコして、違憲判決出しても良かったのでは。

それとも「男女の賃金格差などを踏まえれば、(妻に手厚い)規定に合理性がある」というのは、判決を出す上での理屈で、これが解消されていったら、こういうケースが増えて、年金財政に大きな影響を与えるかもしれない、と予測したのだろうか。


それにしても、問題の地方公務員災害補償法だけでなく、他の法律でも同様の規定があるという。
合憲判決を出すにしても、男女別規定に対して疑問を投げるぐらいの付帯意見があっても良いのでは。

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