畑のリンゴ

某金融機関のチラシ兼月間カレンダーに、暮らしの知恵といったコラムが載っている。

P_20180705_213251_vHDR_On.jpg 気にも留めないものだが、先日、たまたま目に入ったそれに、ちょっとひっかかることが書いてあった。

ジャガイモは……、
ビタミンCがリンゴの約10倍も含まれるため「畑のリンゴ」といわれています。


ジャガイモは土リンゴとか大地のリンゴと言われる。それが畑のリンゴになってもおかしくはない。
しかし、土リンゴというのは、フランス語の"pomme de terre"の直訳ではないのか。フランス語だけでなく、スウェーデンの方言では、earth-pearという意の言葉が使われているそうだ。

ジャガイモはアメリカ原産で、ヨーロッパに入ったのは16世紀、食されるようになったのは18世紀である。

はじめは、聖書に書かれていないという理由で、あえて食べるような人はいなかったという。食べられるようになったのは、フリードリッヒⅡが耕作を強制してからという。(伊藤章治「ジャガイモの世界史」)


"pomme de terre"という言葉も18世紀には定着していたと思う。
そして、18世紀には、ビタミンCあるいはビタミンというものはまだ発見されていない。
「畑のリンゴ」が"pomme de terre"の直訳だとして、少なくともその時点では「ビタミンCが云々」という説明はなかったはずである。

そもそもフランス語で"pomme de terre"と呼ぶようになった理由はなんだろう。
全然、赤くもなければ、ツルッとした綺麗な球形をしているわけでもない。見た目ではリンゴとは似ても似つかない。
ただフランス語のpommeも、英語のappleも、あのリンゴと限るわけではなく、果物全般をあらわす語でもあるという。「エデンの園」の「知恵をさずける実」は、俗説ではリンゴというが、聖書にはその記述はないし、旧約聖書の時代・場所に、リンゴは存在しないはず。
だからフランス語で"pomme de terre"というのは深い意味はなく、土中にできる実ということなのかもしれない。

このように考えてきたけれど、「畑のリンゴ」はフランス語の直訳ではないとしたらどうか。
ちなみにWikipediaのジャガイモの項には次のような記述がある。
利用法
ジャガイモの利用形態は、……
……ジャガイモは、デンプン源だけでなくビタミンやカリウムも多く含んでいる。特にビタミンCが豊富で、フランスでは「大地のリンゴ(pomme de terre:ポム・ド・テール)」と呼ばれ、ドイツ語や上述のオランダ語でも同様の表現が存在する。ジャガイモのビタミンCはデンプンに保護されるため、加熱による損失が少ないという。……

(Wikipedia ジャガイモ)

おやおや問題のチラシのコラムは、ここからきているのかもしれない。


前述のとおり、ビタミンCの発見は"pomme de terre"の語より新しいけれど、ビタミンの発見以前でも、壊血病を防ぐ効果に気づいて、リンゴにもたとえられるもの、すなわちリンゴのような薬効があるから「畑のリンゴ」と言ったのかもしれない。それを現代の知識でいいかえたのが、「ビタミンCが多いから畑のリンゴと呼ぶ」という説も成り立たないわけではない。

もっとも「畑のレモン」とか「畑のイチゴ」(キイチゴじゃないってこと?)のほうがピッタリだが。


おそらく真相は次のようなものではないだろうか。

初めて目にするジャガイモに対して、フランス人は"pomme de terre"という語をあてた。
"pomme"はあのリンゴとしてではなく、実一般を指す語として使われた(つまり「大地のリンゴ」は誤訳で「大地の実」とすべき)。そうやって成立した"pomme de terre"の語だが、後にビタミンCの含有量が多いことが知られ、語源的には関係ないけれど、そのことを言い得て妙な表現であるということで、後付けの理屈として「畑のリンゴ」という言い方が広められた、そういうことではないだろうか。

要するに、ビタミンCが多いことは事実だが、それが命名の理由ではないと愚考するのである。
読者諸賢はどうお考えだろう。

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