大河ドラマの功罪

今年のNHK大河ドラマは「軍師官兵衛」、今のところ好調のようだ。

私は子供のころから大河ドラマを良く見ていた。さすがに「花の生涯」は見ていなかったが、その翌年の「赤穂浪士」は結構覚えている。たしかこの年は12月14日が日曜で、その日に合わせてドラマでも討ち入りだったと思う。
その後、「太閤記」、「源義経」と続いていく。あまり印象に残っていないのもあるが、大体、毎年楽しみにしていた。

昔から、こんなものは歴史ではない、という批判はあった。
一方、「学校の歴史の授業なんかより、大河ドラマを見れば良い」と言った大臣もいる。
これを歴史の再現と思って批判するのは大人げないし、そう思って見るようでは子供だろう。
多くの大河ドラマでは(真偽のほどはわからない)講談などで語られてきたエピソードが入るが、これはこれで「歴史」を楽しむ者の常識であり、「イヨッ、待ってました」という大人のノリなのである。

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このところ、篤姫とか江とか、そういう大英雄的でない人物が取り上げられたが、これを機にそれぞれの「ちゃんとした」伝記ものを読んだ。江などは通常、家光の母として通っているわけだが、福田千鶴「江の生涯―徳川将軍家御台所の役割 」(中公新書)では、これを否定している。
だから大河ドラマはダメというのは間違い、娯楽番組は娯楽として楽しめば良いわけで、それよりも大河ドラマを契機として、実際は(歴史家のちゃんとした考証では)どうなんだろう、と関連書籍を読めば良く、その動機を与えてくれるのが大河ドラマの功だと思う。そうすれば、ドラマへの興味が倍加する上に、本当は違うらしいと批判精神を持って見ることもできるようになる。大河の放送が始まると、ストーリーや撮影裏話などのドラマ解説本が書店に平積みされる光景を見るが、ありがたいことに、便乗商法で、関係書籍が並べられたり、最新の歴史知見に基づく本が刊行される。

で、今年の「軍師官兵衛」。一番有名なエピソードは、信長が本能寺で死んだことを知り号泣する秀吉に対し、「天下をとるチャンスですぞ」と言ったという話だと思う。私も、大河ドラマが官兵衛と聞いたとき、あの策士で腹黒そうな奴に視聴者が感情移入などできるのだろうか、と否定的に思った。
だが、諏訪勝則“黒田官兵衛―「天下を狙った軍師」の実像” (中公新書)を読むと、律義者の官兵衛という全く違うイメージが語られている(本書によると「かんべえ」ではなく「かんびょうえ」と呼ばれていたとのこと)。「軍師」と呼ぶことも不適切(軍師は戦いの吉凶などの占いが本務。官兵衛にその記録はない)、また、参謀というよりも、方面軍司令官という役割だったのではないかという。
というわけで、今までの官兵衛に対する私のイメージはがらりと変わった。それにしても岡田官兵衛はまだ役をつかめていないのでは(脚本のせいかもしれない)。切れ者イメージはもう一つ、直情的すぎる。自分の策に責任を持つ厳しさではなく、責任を上司になすりつけるような甘さを感じてしまうが。

さて、大河ドラマでは、例の「天下をとるチャンスですぞ」のエピソードはどう扱われるのだろう?
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軍師ではない官兵衛

さすが六二郎さま、大河ドラマも重層的に考察されますねー。

珍もかつてはNHK大河ドラマを欠かさず観ていた者です。『天と地と』ぐらいからでしょうか。謙信と信玄の川中島の一騎打ちに心躍りましたが、後年あれは作り話だったのを知るようになりがっかりしたものです(笑)
その後は『新平家物語』もかじりつきましたねぇ。ちなみに珍のヒーローでもある『武田信玄』はDVDをBOXで買いました。(脇役が凄かった)

一時期大河ドラマが近代ドラマになったとき、水曜ドラマ枠で『武蔵坊弁慶』『風神の門』が大河ドラマのような枠割りを果たしていました。両方とも必死で観ましたね。『風神の門』はやはりDVD-BOX買いました。『武蔵坊弁慶』はなぜか総集編以外DVD化されていません。NHKにDVD化の要望をメールした記憶があります(笑)

TVドラマ自体を観なくなった近年(さすがに去年の『八重の桜』は観ましたが)今年の『軍師官兵衛』は観ていないです。六二郎さまの「あの策士で腹黒そうな奴に視聴者が感情移入などできるのだろうか」の「視聴者」の一人です(笑)

黒田官兵衛は荒木村重に幽閉されてから人が変わったというイメージで、忠臣というイメージでもなく天下を虎視眈々と狙っているかというと実際はそうでもなく(晩年ビミョーな行動を起こしますが)でも欲はありそうで、その反動で一途さを感じないのであまり魅力を覚えません。軍師ではないというのに珍も賛成ですが、同じような役割なら竹中半兵衛のほうがずっとかっこいいですね。

ですが「天下をとるチャンスですぞ」(チャンスとは言わなかったでしょうが)はまさに黒田官兵衛一世一代の名場面ですよね。そこは楽しみであります。

珍も大河ドラマは虚実ともにいろんあエピソードがちりばめられた講談だと思います。珍の好きな黒田官兵衛関連エピソードにこんなのがあります。官兵衛の嫡男黒田長政が松寿丸の頃、織田信長の人質となりますが、例の幽閉で所在不明となったとき織田信長が激怒し人質・松寿丸を殺せ!と秀吉に命じます。困った秀吉に竹中半兵衛が機転を利かし、匿う先が石田三成でして、その恩義を知る長政が、関ヶ原の合戦の後捕らえられた三成が屋外で縄をかけられているとき自分の陣羽織を脱いで着せたというエピソードが好きですねぇ。って、官兵衛ほとんど関係ありません。周りのみんなが官兵衛のために動いた、その恩を長政は忘れていなかったということですけどね。まあこれも作り話なのかもしれません。

長々と失礼しました。

Re: 軍師ではない官兵衛

珍之助さまの思いのこもったコメントありがとうございます。コメントの逆順でコメント返しです。

まず、松寿丸のエピソードですが、こんな話もあります。官兵衛が村重に囚われたころ、竹中半兵衛は病篤く自分の城に戻っており、松寿丸を殺せという信長の命令に苦慮するなか、城下で同じ年ごろの子供が水死し、これを幸いとしてこの子供の首を信長に送ったというものです(三成は登場しません)。大河ドラマでは松寿丸が信長と対面していましたが、こちらのエピソードでは、信長は松寿丸の顔を知らないからの策であったわけです。

珍之助さまの次のご指摘、官兵衛は「晩年ビミョーな行動を起こします」は、おそらく、関ヶ原の時に九州を抑え、あわよくば天下をとろうとしたと考えられるという話を仰っているのだと思いますが、ブログで紹介しました諏訪「黒田官兵衛」ではこの行動は天下を狙ったものではないと主張されています。

次に「八重の桜」をご覧になっていたのは、単に綾瀬が見たかっただけだろうと推測します。なお、新島八重についてはブログの写真に載せたようなしっかりした歴史家の本は見当たらないようですが、同志社女子大学が「同志社の母 新島八重」という本を出しています。淡々とした記録もので、あまりドラマティックなものではありませんが、脚色のない事実(部分的でしょうが)として読むのも良いでしょう。

まだ若いころに、新・平家物語にかじりついたとはなかなかのものですね。近年の平清盛とは異なり、平家物語が持つ滅びゆくものの哀愁を美と感じられるドラマだったと思います。近年の「平清盛」は、H県知事が汚いと批判しましたが、私は面白く見ました。院・天皇の争いが丁寧に描かれ、女の争いや信西が志高い人物と描かれたことなど、平家視点ではない、興味深いストーリー展開だったと思います。ただこのときも平氏は貴族であって、あんなに薄汚れた風体(H県知事が言うような)がありえたかという疑問はあります。

大河ドラマはブログネタの宝庫かもしれませんね。

困ったときの大河ドラマ

議会答弁のように的確で、それでいて答弁でもなかなか出てこない鮮やかな返しをありがとうございました(笑)

官兵衛が解放され帰還したとき(裏切ったのではないとわかったとき)、信長は松寿丸を殺せと命じたことに「しまった!」と慌てところへ、秀吉が「はばかりながら…」と松寿丸は生きていることを報告し、逆に信長は秀吉の行いを褒めたというエピソードもありますが、これは「甫庵太閤記」あたりが出所のかなり作り話っぽいですね。

また、官兵衛が関ヶ原の頃に九州で騒ぎを起こした(程度だと思っています)のは、珍も天下を狙ったものではないと思います。最後っ屁というとあんまりでしょうが、血が騒いだに近いノリだったのではないでしょうか。

「綾瀬はるかを見たかっただけの『八重の桜』」というのは2/3ぐらい当たっていますが(笑)一応OBとしては観ておかないといけません(同級生が大学広報室の責任者なもので)。でも会津のときのほうが見ごたえがあったというのが正直な感想です。

『平清盛』は観ていませんでしたが、観ていた人の感想を聞くと六二郎さま同様決して悪くなかったです。H県知事のありきたりなドラマ観を晒すような発言は不細工ですね。視聴率が良くなかったのは時代とマッチしていなかっただけかもしれません。あの当時のリアル社会では今よりもっと閉塞感が重くのしかかっていたのに、平安時代末期の陰鬱な世相を見るってのもねぇ…てな感じでしょうか。重いものよりわかりやすい勧善懲悪とか。平氏ってヒールなイメージですからね。

いや、ほんと大河ドラマネタはブログ行きが多いですね。
困ったときの大河ドラマ(笑)
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