道鏡

NHK大河の「花燃ゆ」が不調だそうだ。
幕末青年群像を描くドラマとして、文の眼を通して生き生きと描かれていて、それなりに楽しめる作品だと思っている。(心配なのは、久坂や高杉が死んだあとどうするの?)
まぁ、NHK大河が年度途中で打ち切りになる心配はなさそうだから、別に視聴率を気にしなくても良い。

昔、「勝海舟」で渡哲也が勝らしくないと批判されて降ろされたことがあったが、文の場合、ほとんどの人は文についてイメージをもっていないから、そういう批判が出るはずもないし。


閑話休題。
昨日稿では美坊主をとりあげたが、道鏡は美坊主だったという説がある。
その線で大河に「道鏡」をとりあげてはいかがだろうか。

NHK大河ドラマで一番古い時代をとりあげたのは「風と雲と虹と」―平将門、平安中期である。
「大河ドラマの時代」参照

それ以前の時代は、1年の長丁場を持たせる自信がないのか、国民になじみがないと視聴率を期待できないのか、未だ取り上げられていない。
前にも書いたように、里中満智子「天上の虹(持統天皇物語)」などは、1年では短かすぎるぐらい中身が詰まっている。作者が「あと1巻で完結」と予告しているから(といってもいつのことかは)、完結を待ってで良いから、取り上げてもらいたいものだ。(持統天皇は真木よう子あたりが凄みがあって良いのでは。)
古代史でもしっかりした(歴史考証がという意味ではないが)原作はいくらでもある。

ただし、大河ドラマ以外(スペシャル・ドラマ?)では、古い時代を取り上げたものはちょくちょくある。
民放でも、テレビ朝日が「額田女王」(原作:井上靖)を取り上げたことがある。
NHKでは、古代史シリーズという括りがあるようで、時代の古い順からあげると、

・「聖徳太子」2001年
・「大化改新」2005年
・「大仏開眼」2010年

と、時代順と放送順が一致している。
  NHKshotokutaishi.jpg  NHKtaikano.jpg  NHKdaibutsu.jpg

で、「大仏開眼」では孝謙女帝(石原さとみ)の即位あたりで終わるわけだが、
孝謙(称徳)女帝とくれば連想されるのはやはり道鏡でしょう。

AngoDokyo.jpg坂口安吾に「道鏡」という短編がある(青空文庫・Kindleから無料ダウンロード可)。
この短編では、姦通は否定していないが、それは女帝が淫乱であったからで、道鏡はそれに逆らえない、清純で、学問に熱心な美青年(美坊主)として描いている。政治には無関心で、政治的野心もなく、ひたすら仏法修行に務める僧となっている。また、道鏡は天智天皇の孫という説に立っている。

NHKの「英雄たちの選択」という番組で、道鏡をとりあげていたが、道鏡の豊かな学識について触れていた。ただ、最近の平城宮の発掘成果により、天皇と同等の儀式を法王たる道鏡が行ったと推測されるなど、安吾の小説でいうようなまるっきり政治に無関心というわけでもなかったようだ。ただ単純に、悪人とかエロ坊主というとりあげかたではなかった。

そもそも番組名からすれば、道鏡を英雄に列しているわけだ。よくNHKの会長や経営委員が文句をつけなかったものだ。


また、称徳女帝崩御後、道鏡は下野薬師寺の別当に「左遷」されたというが、下野薬師寺は、奈良の東大寺、筑紫の観世音寺と並ぶ「本朝三戒壇」であり、他に戒壇を持つ寺はないほどの重要な寺であるから、左遷というのはあたらないという批判がある。そもそも相手が女帝であろうと誰であろうと、女犯は破戒であるから、それが事実認定されたなら、当時なら僧籍が剥奪されるだろうとも言われている。

道鏡は、平将門、足利尊氏と並び、日本三悪人の一人とされる。後の二人は天皇に逆らった「逆臣」であり、道鏡は天皇と姦通したとんでもない男ということである。(これは孝謙女帝を、ひいてはその父帝聖武を貶める話で、それこそ不敬だと思うのだがいかがであろう。)

shoutokuetdokyo.jpg従来、道鏡の画像なるものは、精力絶倫の脂ぎったエロ男に描かれている。
川柳では「道鏡はすわるとひざが三つでき」と、巨根伝説が付随する。
こんなのもあるそうだ:

「道鏡に根まで入れろと詔」
「道鏡に崩御崩御と称徳言い」 
(つい悪乗りしてしまった)。


弓削道鏡は私の職場があるY市の出身であり、道鏡が羽振りが良かった頃は、Y市あたりは「西の都」と言われたという話もあるようだ。
しかし、後世、こういう話が流布されてか、道鏡の出身地元での人気はいま一つ。Y市からこんな極悪人を出して申し訳ない、そいつがここにいたら石をなげてやりたいというところか。戦時中、Y市弓削出身であるというだけで不敬だと殴られたというひどい話もあるらしい。
三悪人でも、他の二人は勇壮な武士だから英雄視する向きもありそうだが、道鏡は、姦通と巨根という淫靡な言葉に塗れているためか、口に出すのもはばかられるという扱い。

将門も、尊氏も、NHK大河ドラマの主人公になったのに、三悪人の中で、道鏡だけがまだ取り上げてもらっていない。
一年間の主役は務まらないかもしれないが、賢く、涼しげで、女帝とは純粋な愛で結ばれる道鏡をスペシャル・ドラマにしても良いのでは。(私は読んでないが、黒岩重吾の小説もある)

ichikawaraizouyousou.jpg調べると、過去に映画になったことがあるようだ(「妖僧」)。道鏡を演じるのは、あの市川雷蔵である。荒唐無稽な脚本だったようだが、雷蔵がそんな下卑た淫乱坊主になるはずがない。

孝謙女帝は石原さとみが続けても良いし、宮沢りえも良さそう。清純そうで乱れたら怖そうな感じ。
道鏡は、雷蔵というわけにはゆかないから、男と女が逆転したという設定の「大奥」で、知的で将軍(女)を愛する役を演じた堺雅人(既に雪村が決まっているから無理か)が良いかもしれない。
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伝説の…

オハコネタに筆致が躍っていますな(笑)
『花燃ゆ』から道鏡へのなだれ込み方は有無を言わさぬ怒濤の展開。しかしそこは六二郎さま、歴史解釈を交えながら示唆に富んだまとめ方をなさるところはさすがです。

「美坊主」から道鏡を読めなかったのは、道鏡って脂ギッシュなスケベ坊主というイメージだったからでしょう。
でもこの弓削道鏡、珍も決して極悪人ではなかったと思います。ただし巨●伝説は根拠なく信じています(笑)
そもそもは天皇を虜にしたってことで、後世に亘ってネガティブキャンペーンというか、かなりマイナスイメージで盛られているのは間違いないですし、庶民もそれを囃し立てているところがありますよね。

NHKBSプレミアム『英雄たちの選択』は珍も観ました(この番組、けっこう観ていますし、観られないときは録っています)。NHKは巨●伝説には触れませんでしたね。Y市も確か映像に出ていましたよね。地元じゃ不敬のマイナスイメージから触れられたくないのでしょうが、間違いなくY市のヒーローですよね。珍なら道鏡をモデルにゆるキャラ「デカマ●くん」をつくってみたいです(笑)

それにしても川柳はいずれも白眉ですな。2つめは知ってましたが、1つめ3つめは知りませんでした。誰が作ったのか、珍的には尊敬に値します。(不敬ですが)
それを探し出してピックアップする六二郎さまも凄いです。

珍は道鏡を演じるなら平幹二朗をイメージしていましたけど、相当な演技力が求めたれるのは間違いないですよね。孝謙女帝は石原さとみがいいですね。確かに宮沢りえも捨てがたい…。美人なのにランちゃん…みたいな背徳的な香りがたまりません(笑)

道鏡ネタはぜひシリーズ化していただきたいですな。まだまだネタが出てきそうですぜ。

*NGワードに引っ掛かったのかなかなかコメントがアップされません(笑)
伏せ字にしましたが(最初は伏せ字なし)何がだめだったのでしょうね。

Re: 伝説の…

道鏡ネタが続くかどうか……
次はラスプーチンかと思ってたのですけど。なんでも30cmのがホルマリン漬けかなにかで残っているとか。

今回は坂口安吾の小説で刺激されたのですが、だいたい安吾って清純とは無関係そうなので、道鏡が清純に見えるのかもしれませんね。
ちなみに、左遷先のほうには道鏡や後見女帝所縁の寺社もあるようですし、復権しようという人もいるようです。

「デカマ●くん」、イタダキッと言いたいところですが、直接的すぎて無理ですね。「もっこりくん」でもアカンでしょう。それに「ハニワこうてい」とかいう可愛げのないキャラががんばってます。その点、ゆるキャラブーム前から活動しているはちかづきちゃんはよろしいですな。経験年数が自信にあらわれてます。ただ、あの中に市の企画担当のむさい男が入ってたというとゲッソリしますが。


> *NGワードに引っ掛かったのかなかなかコメントがアップされません(笑)
実績ある「ファロス」を使いますか。陽物、陽根とかも通過するかもしれません。
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