「文化」について

今日は「文化の日」。
祝日法では、"文化の日:11月3日 自由と平和を愛し、文化をすすめる。" と定められている。
「自由と平和を愛し」というのがなかなかふるっているが、日本国憲法公布の日(1946年11月3日)にちなんでいるなら、この文言もなるほどというわけだ。

yoneyamatoshinao.jpgそして「文化」である。学校の授業で「文化ってなんですか」というようなのがあったと記憶しているが、芸術文化がある一方、文化住宅、文化包丁、・・・というような「文化」の使い方もある。憲法は「健康で文化的な生活」。
このブログはタバコの話も多いけれど、タバコを文化と言ったら、怒る人もいるかもしれないが、それは以下の説明を読んでからにしてもらいたい。

このように多様な使い方がある言葉なのだが、文化の定義というのを初めて聞いたのは、大学の教養課程の講義で、米山俊直先生の「文化人類学」。眼から鱗がおちる、というのはこういう講義のことだろう。
米山先生の授業はいきなり文化の定義で始まる。それは次のとおり。
文化とは、集団内で、
  創造され(created)、
  分有され(shared)、
  継承される(heritated)
もの

なぜ、これを文化と定義したのかは、その後の講義によって明らかになる。
多くの文系学問においては定義が結論であって、定義に至るまで侃侃諤々の議論があるのに対し、米山先生の講義では、定義すなわち概念を導入することによって、研究対象が見通しの良いものになり、理論が豊かになる。

これは建設的なやりかただと思う。研究を進めるために、中心的な概念について相互に誤解がないように決め事をしておくもの(その定義の妥当性は研究が進んでから判断され、必要があれば修正されるだろう)。

これに対し、おまえの定義は違う、といって定義の議論を延々とするというのは非生産的なように思う。ただし、その議論をめぐってさまざまな知見が集約され、定義が一致すれば議論終了というのもある。これは議論の出発点ではなくて、議論の目標。「定義」という言葉の使い方が違う。
数学などでは定義の意味が解るのは、理論がずっと広がってからになることが多い。たとえば連続函数の定義として現代数学で一般に採用されているのは「開集合の逆像が開集合になる」だと思うが、いきなりこんなことを言われても?だろう。


大学1年生の私の程度では、そんな科学哲学など持ち合わせているわけではなかったが、この定義の切れ味が気に入って、楽しく講義を聴いていた。

授業は、幸島のサル、ゴリラ、チンパンジーなどの霊長類の文化と社会、世界の部族の文化と社会がとりあげられて、どう「解釈」するかという内容。他、ローレンツ流の動物行動学とかにも広がっていた。
また、こうした「文化」の定義では、「学生の文化」「ヤクザの文化」など、「○○の文化」という言い方が可能で、そういう社会内の集団も人類学の対象になりうる、そういうこともこの講義で語られたと思う。

ということで、結構、この講義にはまって、関係書籍をいろいろ読んだ記憶があるし、思えば今までの読書傾向にも色濃く反映している。実際、講義中に、いろんな本を紹介していただいた。著者名だけあげれば、ルース・ベネディクト、コンラート・ローレンツ、デズモンド・モリス、…、日本人なら、今西錦司、中根千枝、…
サルについてなら、河合雅夫、伊谷純一郎、…。先日は、山極寿一『「サル化」する人間社会』というのもおもしろかった。

教育の目的の一つは、子供に学ぶ意欲を持たせることだと思うが、そういう意味では十分に成功した講義だと思う。ただ、こういう研究者のマネはできないなぁ、と、秘かなファンにとどまってしまったが。

何はともあれ、いまでもこの「文化の定義」は私の思考にしみついているから、多くの人が「文化的」というところは、違う言葉―芸術的とか近代的とか―にしたくなってしようがない。

ところで、理科系での言葉の使い方が、世間的なそれと違う場合は結構ある。
「一般に」というときは「例外なく」という意味で使うし、「抽象的」というときは「本質的なものを取り出している」という意味。
もちろん世間の使い方はそうではなく、「一般に」は「普通はそうだが実は違うことがある」と留保する場合だし、「抽象的」は「(具体性がなくて)何を表しているかわからない」という意味で使われる。
それは了解しているし、それが間違いだとも思っていないのだけれど、自分がその言葉を発する時は、世間の使い方にはどうしても抵抗感がある。(恩師の怒鳴る声が聞こえる「それは『一般に』じゃないだろう」)
だから会話はこんな風になる:

相手:一般にはこうなんですが、この場合はこうです。
私 :多くの場合はそうですけど、その場合はそうなんですね。

こうやって、相手の言葉の意味を確かめているわけだ。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

Gallery
検索フォーム

⇒記事一覧

プロフィール

六二郎。六二郎。


定年退職
苦しい家計の足しに再就職
=いつクビになってもええねん
 言うたもん勝ちや!のブログ
リンク
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
アーカイブ
カテゴリ
タグ

書評 ITガジェット マイナンバー Audio/Visual 

リンク
現在の閲覧者数
聞いたもん