岡田暁生「西洋音楽史」(その1)

seiyouongakushi.jpg昨年の暮れ、クリスマス音楽について連続して書いたが、ヘンデル、バッハ、シャルパンティエ、コレルリとバロック期のものばかりをとりあげた。
また、30日には西洋中世音楽という稿を、ニューイヤーオペラコンサートでも、バロック・オペラで1稿を起こした。

書いてはみたものの、どうもこのあたりの音楽史のきちんとした知識が不足していることを自覚、付け焼刃の勉強で、タイトルの本を読んだ。

岡田暁生氏の著書は、この本を含め中公新書から3冊出ている。
・オペラの運命 十九世紀を魅了した「一夜の夢」(2001年)
・西洋音楽史 「クラシック」の黄昏(2005年)
・音楽の聴き方 聴く型と趣味を語る言葉(2009年)

他の2冊は前に読んだことがあるのだが、主張が客観的で(自分の趣味が入ることを否定はされないが)、根拠も明確なので(音楽にはたくさんの伝説があるが信憑性に欠けるものも多い。楽曲解説とかにそういう俗説が無批判に書かれているものもある)、信頼できる著者と評価している。

ongakunokikikata.jpg operanounmei.jpg新書という体裁は分量も語り口もちょうど良い。


さて、内容だが、まずはじめに、音楽史についてこう書かれている:
…「古楽」/「クラシック」/「現代音楽(欧米では新音楽というが)」という時代区分が音楽史への私たちの眼差しの遠近感を、暗黙のうちに語っている。つまり「古楽」および「現代音楽」は「古い/新しい」という時間軸のカテゴリーであるのに対して、「クラシック」にはこうした歴史性の含蓄は含まれていないのである。……古楽は「クラシックよりも前(クラシックが形成されていった過程)」の、そして現代音楽は「クラシックよりも後(クラシックが崩壊していった過程)」の音楽、つまり歴史的音楽なのだ。「古楽と現代音楽は大なり小なり歴史的距離のある音楽だが、クラシックは私たちが今その中で生きている音楽環境の自明の一部である」

この見方は、私だけでなく、多くの「クラシック」ファンに共感されることだろう。
そして、なんだかクラシックというものの位置づけがすっきりしたという感じがする。

ところで、classicは日本語では古典的と翻訳されるが、例によってOnline etymology dictionaryによれば、classicの語はclassから派生し、"of the highest class" を表すのだそうだ。またこの辞書によれば、西欧でもBachからCramerあたり、つまり1700~1830年を指していたものが、1880年頃には時代の評価に耐えて残ったものという意味になり、ロマン派と対照してclassicと呼び、それが、ジャズに対照して、さらにはポピュラーに対照してというように、音楽の領域が広がるにつれて、classicも対象を広げてきたとされる。

以前、クラシックが好きですかと聞かれて「はい、クラシックは好きです。ロマン派は嫌いです」と相手を困惑させる応答をした覚えがある。


さて、本書の構成は次のようになっている。

第1章 謎めいた中世音楽
第2章 ルネサンスと「音楽」の始まり
第3章 バロック――既視感と違和感
第4章 ウィーン古典派と啓蒙のユートピア
第5章 ロマン派音楽の偉大さと矛盾
第6章 爛熟と崩壊――世紀転換期から第一次世界大戦へ
第7章 20世紀に何が起きたのか


なので、第1、2章が古楽、第7章が現代音楽であり、第3~6章はクラシックということになる。「クラシックには歴史性の含蓄は含まれていない」のだが、クラシック自体には歴史があるということになる。
「現代音楽の美学」(A.ゴレア)などという本は大昔に読んでいるから、第7章あたりは多少の知識はあるが、なんといっても第1章、第2章は初めて聞いたことが非常に多い。

ところで、今回、本書は電子版を読んだのだが、随所で言及される楽曲の一部でも音を収録しておいてもらえないものだろうかと思う。また、本書では要所要所でCDが紹介されている。既に私が持っているものもあるが、本書を読んだことで購入したものもいくつかある。さわりだけ紹介したら、全部を聴きたくなるという人も多いと思う。販売促進にもなると思うのだがどうだろう。

関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

Gallery
検索フォーム

⇒記事一覧

プロフィール

六二郎。六二郎。


定年退職
苦しい家計の足しに再就職
=いつクビになってもええねん
 言うたもん勝ちや!のブログ
リンク
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
アーカイブ
カテゴリ
タグ

書評 ITガジェット マイナンバー Audio/Visual 

現在の閲覧者数
聞いたもん