「天上の虹」完結

去る3月18日の「道鏡」の稿で、『作者が「あと1巻で完結」と予告しているから(といってもいつのことかは)』と書いたのだけれど、3月13日に、第23巻<完結>が出版されていた。
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ときどき Amazonで出版情報をチェックしていたのだけれど、その狭間になって気付くのが遅くなった。だいたいAmazonは購入実績はもちろん、調べただけのものでも記録して、おせっかいなメールやウェブで「おすすめ」を執拗に案内してくるのだけれど、この数年来「天上の虹」の新刊はAmazonで買っていたにもかかわらず、第23巻を案内するメールが来た覚えがない。今までなら出版予告段階でも案内されて、すぐに予約購入していたのに。


既に前の巻から、長寿の妙薬として水銀を服用していて(中国にはこんなすばらしい薬があると言いながら)、体調が悪いことが描かれ、崩御が近いことが予告されていたから、最終巻はおそらく淡々と死に至る日々が書かれるに違いないと思っていた。

ネタバレにならない程度に書くけれど、日本書紀と古事記、なぜ2つの歴史書が作られたのか、従来からいろいろな説があるようだし、古事記には偽書説もある。本書ではその理由が推測されている。その根拠はおそらくまったくないのだろうが、作家だからこその想像力、うますぎる話のようにも思うけれど、なるほどとも思う。

讃良の読みは「ささら」と「さらら」の2つがあり、「ささら」の方が有力だったのだが、音感で「さらら」を選んだと作者あとがきにある。私は「さらら」だと思っていたが、これも里中先生の影響だったのかもしれない。

そういえば、万葉集で有名な「ささのは」の歌について、「さのはは やまもやに やけども」と「さのはは やまもやに だるとも」の2つの読みがあり、前者はさ音の多用が笹の葉が風に騒ぐ音風景を表すというのに対し、斎藤茂吉は「万葉秀歌」のなかで、前者は軽すぎ、「やま」のに対して「だるとも」が韻であり、それが重厚であると後者をとる。音の問題は讃良を音仮名(万葉仮名)で表記したものなど決定的な証拠が出ないと難しいのではないだろうか。


そして、讃良の死の状況であるが、これも今まで聞いたことのない様子で描かれる。
最後は、良く知られた史実、初めて火葬された天皇として、後の仏教立国の礎を築くことになるのだが、本作では火葬の煙となって全国にゆきわたり、国を、民を、ささえていくのだという讃良の思いで情緒的にしめくくる。

茶化すようだが、大河ドラマでヒロインがぜんぜん歳をとらない、おかしいという話を耳にするが(最後に突然、白髪になったりする)、「天上の虹」でも、讃良が一向に老けない。しわひとつないままで崩御する。

持統の後、文武、元明、元正、聖武、孝謙(称徳)と続くわけだが、里中先生には「女帝の手記―孝謙・称徳天皇物語」という作品もある(未だ読んでない)。これには道鏡はどう描かれているのだろう。
また、永井路子に元正天皇、孝謙天皇を主人公にした歴史小説があるらしい。これも未だ読んだことはないが、興味が惹かれる。

こうして完結してみると、またあらためて第1巻から通して読み直したくなるのだけれど、実は、読みたいという人がそこそこいて、そういう人のところに分散してしまっている。これを揃えるのにまた一苦労しそうだ。

ところで、以前、大阪府立弥生文化博物館を訪れたとき、ミュージアム・ショップで、里中満智子先生による色紙や扇などが販売されていた。マンガ一冊より高い価格だったので購入しなかったけれど、まだ売っているのだろうか。

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