兄を信じた妹たち

shouinandfamily.jpg 以前「大河ドラマの功罪」で、功の方として、関連書籍を読む動機づけになると書いたけれど、今年の大河ドラマ「花燃ゆ」では、関連書として一坂太郎 「吉田松陰とその家族 兄を信じた妹たち」を読んだ。

その感想を書く前に、周知のとおりNHK大河ドラマ「花燃ゆ」が低視聴率にあえいでいる。この水に落ちた犬を打つように、いろいろな悪口が言われている。

女性を主人公にすれば視聴率が稼げる
イケメンをたくさんだせば視聴率が稼げる―龍馬に福山を使え
ヒロインの知名度が低くても成功例はある(篤姫、八重)

要するに、NHKの安易な企画が失敗の原因であると分析されている。

私などは文に感情移入することなどないし、イケメンと言われても俳優の名前がわからないぐらい芸能オンチだから、基本的にストーリーと演技を楽しんでいるわけで、酷評されるほど酷いドラマだとは思っていない。
特に松陰の伊勢谷友介ははまり役と言ってよい。「八重の桜」のときは小栗旬が演じたが、端役にすぎず評価のしようもないが、松陰の狂人じみたところが出ておらず印象に残るものではなかった。

この本で、ケチをつけるところは書名、その副題である。
「兄を信じた妹たち」というのは、あまりにあざとい。「花燃ゆ」に阿ったネーミングまるだしである。
ただし、その副題のあざとさと、内容とは別の話。
松陰の家族、親戚が、松陰にどう関わり、松陰をどう支えたかを丁寧に追跡しているもので、内容については申し分のないものになっていると思う。もちろん、松陰の事蹟を通観していて、松陰伝といっても良いものに仕上がっていると思う。
松陰については幕末ものの本や歴史番組などで紹介される断片的な知識はあっても、まとまって松陰伝という形では読んだことがなかった。本書ではじめて知ったことが多いことは勿論だが、いろんな知識の断片がうまくつながったと思う。

ただし、ドラマのヒロイン文のことはあまり書かれない、というか書くべき内容が少ないのが実態らしい。
「あざとい副題」と言ったが、大河ドラマの文は四女(三女・艶は夭折している)であり、松陰とは13も歳が違う。本書によれば、松陰には2つ違いの妹で杉家長女の千代という人がいて、歳が近いこともあって、松陰は兄・梅太郎、妹・千代 の3人で一緒に遊び、また学んだという。
松陰についての身近な人たちの証言として重要かつ量も多いのは、この千代や、母・滝のものだという。

ドラマでは壇ふみ演じる滝だが、実際の滝も士の奥方として、母として立派であるだけでなく、ダジャレ好きだったという。松陰もユーモアあふれる人物だったらしいが、これは滝の影響かもしれない。

また、次女・寿、四女・文は、父・百合之助、兄・梅太郎が藩の役を与えられて経済的に豊かになる前のことは知らずに育ったという。

そうであれば、松陰を支えた妹というのは、文ではなく千代のほうが重要な気がするのだが、なぜか大河ドラマでは千代は全く出てこない。
これは一体どうしたことだろう?
文をクローズアップするために、邪魔な千代を歴史から消し去ったのであろうか。

また、大河ドラマ中では、次女の寿は、気が強く、小田村伊之助との間もそれがためか、もうひとつしっくりしないように描かれている。しかし、本書によれば、寿は女性としては規格外で、気丈だ(古風な女性観を持つ松陰はずっとそれを気にかけていた)が、二人の間は睦まじく、寿がいなければ小田村はただの書斎人で終わっただろうともされている。

本書によれば、伊之助は、寿が亡くなったとき、着ていた服の襟などについている垢さえも愛おしんで、このままではカビるから洗わなければならないが、それもつらい、と言ったと伝えられている。

寿を意地悪く、夫婦仲を冷たく描くのは、文をひきたてるためだろうか。

こういうのが大河ドラマの罪である。
ドラマ中で描くのが難しいのなら、せめて番組の後に放送されている「紀行」で、より歴史的事実に近い説明をつけてとりあげたらどうだろう。

「草燃える」では、時政に結婚を反対された政子の頼朝への逃避行が描かれるが、原作者の永井路子氏は、これは歴史的事実ではないと思うがドラマティックにするために作為したと解説されていた。

まぁ、大抵の場合、作家の貧弱な想像より、歴史事実のほうが遥かに意外性がある。作家がすべきことは、歴史解釈に基づいて登場人物の内面を推し量り、それを台詞・演技に込めて、生き生きと描くことであろう。

ところで、松陰亡きあと、これからは久坂・高杉を中心にドラマが進むのだろうが、文の出番はどう作るんだろう。

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