「女帝の歴史を裏返す」

joteinorekishiwo.jpg 永井路子「女帝の歴史を裏返す」の感想。

以前、「天上の虹」完結の記事中で、 ”永井路子に元正天皇、孝謙天皇を主人公にした歴史小説があるらしい” と書いたし、また、持統天皇をとりあげた「茜さす」という小説もある。これらの小説はどれも読んでいないのだけれど、その永井路子氏が、推古天皇から後桜町天皇までの8人の女帝について歴史講座をされたものを本にまとめたもの。

これは歴史の本と言うには推論が大胆、つまり今までの「常識」やイメージとは違うようだけれど、その推論を裏付ける具体的事実がないとしても、それを否定する事実もなさそう。そして、この推論は、明確にスジが通っていて、なるほどと腑に落ちる。簡潔で大変読みやすい。

私が今までもっていたイメージは、さすがに単なる中継ぎ論ではないが、推古は自身が政治を行うというより、どっしりとそこに居て存在感のある女帝、皇極(斉明)はそれほどの存在感はなく、とりわけ斉明時代は中大兄の隠れ蓑というもの。そして持統はやはり「天上の虹」のイメージである。
しかし、永井先生のこの本は、その天上の虹の持統のイメージを補強するとともに、覆してもくれる。

キーワードは、女系、より正確には双系という当時の氏族・家族の構成原理。
女性が家に居て、その女性を支える男たちという構造が、氏族を引き継いでいく。大家(おおとじ)というそうだ。
そうであるなら、推古帝が蘇我氏という家を保持する立場であることは当然のことである。そして、その蘇我氏を中心に国政が行われる。という絵解きである。この構成原理をベースにおけば、女帝の存在はなんら不思議なことではないという。

そしてこの構造は、皇極においても持統においても同様に続いているという。
持統はこの権力構造を強く意識し、その中心にあってその維持に努め、それゆえに力をふるうわけだが、その後の元明・元正はその役割を自覚しつつも氏族の力が減退していく時代となる。
その蘇我氏の地位が藤原氏に簒奪されていく。そこに孝謙天皇が登場するというわけだ。

この本では、たとえば、なぜ藤原鎌足は持統期にはあまり目立たなかったのかをはじめ、飛鳥・奈良時代の不思議がさまざま取り上げられ、前述の推論を軸として、その謎解きが行われる。そして、いろいろな歴史上の事件が関連し、筋道をもってあらわれてくるのである。
だから、ちょっとわかりにくかった飛鳥・奈良時代の歴史の動きが腑に落ちてくる。

「天上の虹」がきっかけとなって読んだ本だから、最後に持統帝について補足。天上の虹では、偉大な政治家、厳しいところもあるが信念と慈愛をもったスーパーヒーローであるけれど、永井路子の筆はもっと穿つ。前記のとおり、権力構造の中心にいて、その権力をふるいかつ補強する女性であり、権力者なら当然するであろう、陰謀、卑劣な振る舞いも含めて、力をふるった容赦ない帝王が見えてくる。

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