超常現象の科学

ParanormalityCover.jpg 随分昔から、偏見とか先入観というのは、決して悪いものではないと考えていた。
もちろんこれらの言葉は普通、良い意味では使われない。偏見や先入観をもたないことが、正しい判断、公正な判断につながるというのが普通である。

しかし、偏屈な私は、偏見・先入観がないことは、とりもなおさず知識・文化のないことを意味するのであり、そんな安易な言葉使いは避けたいと思ってきた。

情報処理の世界では、同様の意味を持つ言葉で、そういう通俗的価値観のバイアスがない言葉がある。デフォルト処理、フレーム継承などである。


偏見・先入観の類は、DNAにも書き込まれている。
一例が、コンラート・ローレンツの発見で有名になった「刷り込み(imprinting)」で、DNAレベルでの偏見である。
そして、ほとんどの場合、この偏見(本能)は生物にとって、実に都合の良い結果をもたらす。

たまに失敗する。ローレンツを自分の母親だと思い込んだハイイロガンの話など。


超常現象の科学」は、人間がいかにだまされやすいか、だましのテクニック、だまされる心理、そういうものを丁寧に、実例でもって示している。
そして、最後に著者は問いかける。「月に人類を送るほどの脳が、なぜ幽霊や超能力を信じてしまうのか」と。
そうではないのだ、繊細にして高度な情報処理をするからこそ、存在しないものが見え、ありえないことを信じてしまうのだ、それが著者の答えである。

本書の目次を参照しよう。
第1章 占い師のバケの皮をはぐ

ヒトの脳は「自分が見たいもの」しか認識できず、「意味のないもの」にも意味を見出してしまう。その錯覚を利用すれば、誰でも「百発百中の占い師」になれるのだ。

第2章 幽体離脱の真実

鏡に映ったゴム製の義手を「自分の手」と錯覚してしまうヒトの認知システム。「魂が肉体から分離した」と感じるのは、脳の一時的な混乱にすぎない。

第3章 念力のトリック

脳はつねに「選択」をしている。目に見えているものでも、認識できることはごくわずか。その虚を突くトリックで、あなたも「念力」を演じられる。

第4章 霊媒師のからくり

「死者との対話」も「こっくりさん」も、すべてイカサマ。十九世紀英国の大科学者ファラデーは、簡単な実験で霊媒師のからくりを暴いてみせた。

第5章 幽霊の正体

「波止場の倉庫に幽霊が出る」インチキ話の噂を流してみたところ、次々に「目撃証言」が集まった! 人はかくも暗示にかかりやすく、騙されやすいのだ。

第6章 マインドコントロール

荒唐無稽とわかっていても、なぜ人はカルト教団に囲い込まれてしまうのか? 洗脳から身を守るための四つのコツを一挙公開する。

第7章 予知能力の真偽

聖書の時代から「予知夢」は信じられてきた。だが、統計学の「大数の法則」とレム睡眠のメカニズムを知れば、予知夢など存在しないことがはっきりする。


著者は、実際にプロとしてショーも行っていたマジシャンであり、心理学者である。こんなことも書いている。「なぜかマジシャンには超常現象を信じている人は少ない」と。

「なぜか」とわざわざ書いているが、読者にはわかっているでしょうという意味である。


ただ、超常現象がなぜ起こるのか解ったからと言って、それにだまされないようにするのはなかなか難しいことだということもわかる。それは人間の本能でもあるからだ。
超常現象を目の当たりにしたときこそ、偏見・先入観を捨てなければならない。普通に言う(疑心を捨てろという)意味とは、全く逆の意味で。

私をだましているのは、私の脳だ。

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