犯罪原因論と犯罪機会論

wakayamaken2015101500004_1.jpeg テレビで和歌山県の「防犯パトロール犬」が紹介されていた。

この話題は何度かテレビで取り上げられているが、だいたいは次のような取り組みであるようだ。
犬の散歩をさせる人が、時間帯や散歩コースを調整して、子供が犯罪に巻き込まれないようにするというもので、犬には、防犯パトロール犬を示すバンダナを首に巻きつけてそれとわかるようにしている。6頭で始まったが、今では70頭を数えるまでになったという。

この取り組みは、私も大賛成である。犬の飼い主には特別に負担が増えるとも思えないし、犬を通じての絆が、飼い主同士、子供と大人の間に生まれるなど、副次的効果もたくさんあると思う。

ただ、同じテレビ番組で、ちょっと気になることも報道されていた。
和歌山県の安全・安心まちづくり条例である。紀の川市で今年2月に起こった小学生殺害事件を受けて、今年7月の改正で、不審者の通報が、努力義務とはいえ、「県民の役割」として盛り込まれたという。
○和歌山県安全・安心まちづくり条例
(県民の役割)
第4条 県民は、基本理念にのっとり、安全・安心まちづくりの必要性及び方策についての理解を深め、並びに安全で安心な地域社会の形成のため、自主防犯活動を推進するよう積極的に努めるものとする。
2 県民は、安全・安心まちづくりのために県及び市町村が実施する施策に協力し、並びに安全・安心まちづくりのために地域活動団体及び事業者が実施する取組と連携するよう努めるものとする。
3 県民は、地域社会の安全に関する意識の高揚及び自らが犯罪により被害を受けないために必要な知識の修得に努めるとともに、県民の安全で安心な暮らしを害するおそれのある事態の発生に関する情報を知ったときは、県に対し、当該情報を提供するよう努めるものとする。

(*)下線部が先般の改正で追加された項


条文上、「不審者」という言葉は使われていないが、報道では「不審者の通報を義務化」と伝えられている。
なぜ、この条例が引っかかったかというと、以前、公園で子供に声をかけたら不審者扱いされた、という話があったから。
「不審者」ってどういう人なのか。
この問題については、ネットに詳しい解説記事があった。
ネットのニュースはいつ消えるかわからないので、要点を以下に。

「不審者」という言葉を多用しているのは、世界中で日本以外にはあまり見かけない。

○犯罪原因論と犯罪機会論
犯罪学では、人に注目する立場を「犯罪原因論」、場所に注目する立場を「犯罪機会論」と呼ぶ。
犯罪原因論は、犯罪は人が起こすものなので犯罪者を重視することになる。「なぜあの人が?」
犯罪機会論は、犯罪原因を抱えた人がいても、機会がなければ実行されないと考える。「なぜここで?」
欧米諸国では、犯罪原因論が犯罪者の改善更生の分野を、犯罪機会論が予防の分野を担当している。

○「不審者」とはどんな人?
日本では犯罪のとらえかたが犯罪原因論中心で、本来なら事後の「なぜあの人が?」が「事前」に持ち込まれ、その「人」を指し示す言葉として、苦し紛れに登場したのが「不審者」という言葉。
警察も「検挙に勝る防犯なし」という金科玉条の下、犯罪原因論の一翼を担ってきたため、防犯に関心を持つ人が「不審者」という言葉を使い始めてもそれを応援する。
その結果、「不審者」が防犯の世界を席巻するようになった。


もちろん直接犯罪に結びつきそうな「不審者」を見つけたら、しかるべく通報するのは当然のことだと思うけれど、無限定に、知らない人を不審者にしたり、知っていてもちょっとでも変な素振りを見せたら不審者扱いするのはどうだろう。
酷い場合は「ホームレス狩り」のようなことにもつながりかねないと思うのだが。
(それに、ときどき仕事で和歌山へ行く私なんか、地元の人から見たら結構な「不審者」かもしれないし。)
「不審者を見かけたら通報を」というのは、条例を定める人が思うよりもずっと難しいのではなかろうか。

幸い、防犯パトロール犬がはじまってから「不審者」が目撃されたことはないらしい。
防犯意識と仲間意識をもって活動することで、コミュニティの協力、防犯灯の不備や人目の陰になる場所のチェック、そういうところにこそ効果が出てくるのではないだろうか。

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