名寄番号 その3 コスト

名寄番号の3回目。
マイナンバーに代えて名寄番号を考えた動機はコスト問題だから、金額評価はともかく、そんなに経費がかからないだろうという説明を試みる。

まず、税や年金の源泉徴収で使われるケースなど、発行された名寄番号を使うコストについてである。
これは、各企業等の情報システムが、それぞれの納付先へデータを送るときに、名寄番号を併記するようにするだけだと思う。そのフォーマットは納付先当局が決めるのだと思うが、各企業等のシステム変更が最小になるように、たとえば名前の後ろに名寄番号を入れてくださいという方法など、何種類かを認めるようにすれば良いと思う。
もちろん企業内では、既存の社員番号と名寄番号の対応表を用意するか、社員データベースへの名寄番号フィールドの追加が必要にはなる。

つまり、名寄番号の主たる使用で発生する負担・コストは、「面倒だけどしゃあないな」という程度であろう。

マイナンバーでは自治体には連携ネットワークとか中間サーバーとかの仕掛けがたくさんある。私が思うに、番号の主たる利用はたとえば源泉徴収義務者から税当局へといったもので、これらの仕掛けとは関係がない。それでも制度の目的は達成できるから、これらは「使用で発生するコスト」には含まれない。


それに対し、名寄番号の発番、付番については、新しい社会インフラだから、当然、それだけのトーシが必要である。
私は、発番と付番は別の行為と考えている。
名寄番号の発番と付番
  • 発番は、重複した番号が複数人に付番されないように、使用済番号を管理しながら、新しく番号を生成する機能である。
  • 付番は、発番サービスに依頼して名寄番号を発行してもらい、それをリアルの人間に割り当てる機能である。そしてこれは既存事務に付加するなら、市区町村の住民登録に付加するのが良いだろう。

発番については、前にも書いたように、実質11桁(見掛け上12桁)というのは高々1000億個の番号しかないわけで、その番号が使われているかどうかは1000億ビット=125億バイト=12.5GBのデータ量が保持できれば良く、PC 1台程度の機能である。

発番システムは、全国から来る発番要求に遅延なく答えなければならないが、新しく付番しなければならない数は、新生児等で、年間100万人程度である。役所が連休で休んだりするため、1日の登録事務が最大10日分まとめて行われるとして、27,400件/日、これを8時間で処理するから1秒あたり0.95件、つまり1秒に1件処理できれば、発番要求が滞留することはない。で、この程度なら10年前のPCでもなんなくこなせそうだ。

なお、番号自体は受け付け順とか、そういう意味のある順番で出されるわけではない。ランダムに発番され、発番した番号に対応するビットがオンになるというイメージである。これで登録地・時期などの意味が排除された番号を出す。


心配なのは、各市町村側が、番号を受け取り損ねたり、受け取ったけれど住民登録システム側に反映できなかったなどのシステム障害が発生した場合である。
対応方法はいろいろ考えられるが、たとえば次のような方法も考えられる。

発番システムには発番の予約機能を用意する。その日に発生しそうな出生届の数ぐらいの番号を毎朝もらっておいて、実際に使ったら発番システムに使用した旨を送って、使用済とするわけだ。もっともこの場合、番号が使用済みかどうかだけでなく、予約中かどうかも管理する必要があるので、1つの番号に対して2ビット用意することになる。つまり、前述の説明の12.5GBでなくて25GBの容量を用意する。こういう設計にした場合は、1件だけ登録する場合でも、登録直前に発番予約・登録・登録完了という手順にすれば良いわけだ。

なお、発番の予約というのは制度起ちあがり時の一斉付番でも利用できるだろう。


マイナンバーでは、番号生成システムは住基コード及び機関別符号の対応関係まで管理しているようだが、名寄番号の発番システムでは、番号が発番済かどうかしか管理していないから、もしこのデータが漏洩したとしても、直ちにその他の個人情報が漏洩することにはならない。つまりマイナンバーより名寄番号の方がずっと安全であるし、余計なネットワークが不要となり、セキュリティ対策もはるかに簡単になる。

問題は、転居などで住所がわからなくなった人を探す場合。名寄番号ではリアル人間との対応の集中管理はしていないから、全市区町村に対して「名寄番号○○の人が居住しているか」という照会をしなければならない。
もっともマイナンバーは集中管理はしているけれど、そんな問い合わせは認められていただろうか。


発番の問題ではなく、付番の問題だが、同一人に2つの番号を割り当てることは起きないだろうか。
これは同一自治体で発生することは考えにくい(システム上、1つしか名寄番号は記録できないはず)けれど、同一住民が複数自治体に住民登録されている場合には起こりうる。ただ、これはマイナンバーでもそういう事態は避けられない。つまり情報システム上の問題ではない。

聞いた話では、複数の自治体に住民登録があって、だから、選挙権も2カ所(2つ)持っていた人がいたそうだ。北海道と和歌山の2カ所に生活と仕事の拠点があったために、戦後のどさくさで住民登録がはじまったときに、両方に登録したという話である。

あるいは、架空の住民登録をして番号をもらうことも考えられるけれど、これもシステムの問題ではない。

名寄番号では、リアル世界の住人との対応は住基コードだけれど、各自治体は住民のもの(住民であったものも含むと思う)しか保有していない。転居時には転出・転入届がなされるが、このときにはじめて名寄番号が転居先自治体に知らされる。

そんなことで良いのかと言う人もいるかもしれないが、名寄番号は名前と同じ扱いであれば、それで何の問題もないはずである。もし、転入届に名寄番号の記載がないなら、前の役所に問い合わせればOKである。
本質的なのは、転入転出で住民票が移動することではない。前住地での各種記録を転出先に引き継ぐかどうかという問題である。そしてこれは、住民基本台帳法や個人番号法の守備範囲では全然ない。

そしてこうしたデータの交換をするために複雑な情報連携ネットワークが構築され、中間サーバーという実態は集中運用される自治体システムが必要となる。そして個人情報が溜め込まれ、厳格なセキュリティ対策が必要となる。まさに泥沼状態である。


住基ネットワークも必要ない。名寄番号を制度化すれば、住基ネットワークを廃止しても問題はないと思う。
住基ネットのメリットとして説明される住民票の遠隔交付だが、名寄番号カード(本人認証)を使って直接居住自治体へ請求すれば良い(サービスが動いていることが前提だけど、それは現行システムも同じ)。
住基だのマイナンバーだので、特殊な仕様のシステムを作らなければ、行政サービスのスタイル自体が標準化されることになるだろう。

制度起ちあがり時には、一斉に全国民・在留外国人に付番しなければならないが、それは各自治体の住民記録システムをベースとして行う。期日を決めて、その日に住民であった人の番号を発番してもらうわけだ。このとき、発番予約機能があれば、20万人都市なら20万人分をもらって、実際に付番したもの・そうでないものを発番システムに報告すれば良い。この作業は高速に行う必要があるから、このときだけ高価なサーバーを使っても良いが、より現実的なのは一定の期間内の住民移動を吸収する事務手順を作ることだろう。

前に「情報連携ネットワークにマイナンバーを流しちゃいけないのか」という記事を書いたけれど、名寄番号なら、制度維持のために、そんなネットワークを用意する必要はない。必要なのは発番用ネットワークだけである。
また、自治体間の情報連携は、その内容に応じて、各事務ごとに手順が決められるべきものであるし、ネットワークも選択されるだろう。プライバシーが心配なら、暗号化通信を行えば良いのである。


これなら年間100万円もあればできそうに思うのだけれど(金がかかりそうなのはネットワーク利用料だけ)。
マイナンバーの効用がどのぐらいと算定されているのか知らないけれど、仮に効果額が100億円だとしても、システムに100億円使って良いという話にはならないと私は思う。

3回にわたって名寄番号について書いてきたけれど、これは米国のSSNとそう違わないものだろうと思う(SSNに詳しいわけではないけれど)。SSNを持ち出すと、直ちに悪用が心配という反応があると思うけれど、悪用例のほとんどはSSNを知っていることで本人認証を行ったために発生したと推定される。

番号制度が、SSNに学ぶべきことは、他人も知り得る番号であることを前提に制度設計をする(番号を知っていることで本人認証とはしない)ことであって、他人に知られてはならなない番号として設計し、マイナンバー自体の秘匿がセキュリティの要であるかのようなシステムを構築することではないと思う。さらに、それでも後者の立場をとるのならば、源泉徴収制度そのものをやめるべきである。
こうした根本的な部分でのコンセプトについて無自覚なまま進められているのがマイナンバー制度だと、私は考えている。
(そしてその無自覚の代償が数千億円だ)

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