日本外交は奇々怪々

nihonnogaikouha_kawabe.jpg 河辺一郎『日本の外交は国民に何を隠しているのか』 について。

少し古い本(2006.4月)だけれど、国際関係・国際政治について、あまりに知識がなく、思考が足りないことを思い知らされる本だった。
そういうことなので、書かれていることの評価は私には無理だけれど、あげられている「事実」は重い。

妙に細かい話から、この本は始まる。
「日本は国連分担金を滞納している。」
よく読めば滞納(踏み倒し)ではなくて、遅延の常習犯である(こんなところでも米国と足並みをそろえている)ということだけれど、問題は遅延にのみあるのではなく、今まで政府は、我が国は、多額の分担金を真面目に納めてきた国であると宣伝し、そして出しているお金に見合う待遇を受けていないというニュアンスで語ってきたように思う。

分担金の話は、本書の最後にももう一度とりあげられる。
分担金は各国の経済力に従って割り当てられる。日本は、GDP第2位のときには、GDPはフローであり、社会資本ストックの貧しさが考慮されない不適当な指標であると主張し、発展途上国の分担金に対しては、GDPの伸びに目をつけて、GDP以上に適切な指標はないと主張しているのだそうだ。
まさにご都合主義。
また、支払を遅延させるのは、為替差益を考えて国益を図っているという説明が、国内では、まかり通るそうだ。犯罪を犯しても「会社のためだった」と言って正当化するのと同様である。


そして、分担金の話に続いて、
  • 日本は、核軍縮に反対、平和主義に反対
  • 日本は、イラク戦争に賛成するだけでなく、反対の国へは経済力を背景に圧力をかけた
       (結果、シリアは日本の要請によりイラク戦争に賛成した)
という話が、緻密な国連議事録や、政府説明の記録などで克明に追いかけられている。また、あちこちでの我が国の「国益」にもとづく、非協調的行動が例示される。
日本は既に国際的影響力は相当大きなものになっているが、自虐史観もあって、国民はそうは思っていない。それを政府が利用して、国外での反平和主義的活動を隠蔽している、そういう構図である(自虐史観を批判しつつ、国民がそれを持っていることを利用するという、巧妙な方法)。

私は前に、「平和主義とは何か」で、やはりお金以外の貢献をすべきと書いたけれど、事実は違うらしい。
お金は、経済力に応じてというお約束だから、これは貢献と言い切れるわけではないが、その経済力をバックに、各国に圧力をかけることができるのは現実である。
その行動原理は日本の「国益」であって、決して世界平和や人権擁護のためではないらしい。

思えば、我が国は、戦後ずっと国連を活用してきたのである。
戦争放棄の憲法を持ったままで、武力行使を行うための根拠として使ってきた歴史である。日米関係(日米安保)も国連の枠組みで正当化してきたわけである。
日本政府は、米国追随と批判されることを隠れ蓑に、米国以上に利己的な外交を行ってきているのであって、いやいや、しかたなく米国に付き合っているわけではないという。この米国追随という型どおりの批判は、政府にとっては渡りに船でこそあれ、これが続くうちは政府は安泰であり、国民を怖れる必要はないというわけだ。

国際平和に貢献したいと思ったことがなく(敗戦国だからそんな気にもならなかった)、当然、国際平和へのビジョンも持たないから、自国の利益のみで日和見・ご都合主義を繰り返し、それにより国際的な評価が低いのであって、その逆ではないということらしい。
ひるがえって、欧米では、イラク戦争にしろ、人種差別にしろ、それが正義であるか、不正義であるかを、国民が問うのに対し、日本人はそういう問いは行わない。政府の方針に従っているか否かという議論にとどまる。いわば、日本人は民主的な国民性を持っていないというわけである。

本書では、この国民性で我が国に近いのは北朝鮮である、ただし国際的影響力は日本の比ではないけれどとしている。また、北朝鮮は、常に日本が持ち出せる(リンケージ論)、国内を説得する有効なネタらしい。


繰り返しになるが、私は、こういう国際観・政治観・日本人観を論評できるような知識も、思考力も持っていない。そして、多くの日本人も多分そうだろうと思う。
また、上にあげられたような事実について、国会などの公式の場ではあからさまな虚偽説明がまかりとおり、そしてその虚偽を指摘できない、あるいは問題と感じられない野党とマスコミ。私を含む国民の無知も、これではしかたがないことだろう。

本書でも再三批判されているが、マスコミは、深謀遠慮なのか、自己保身なのか、単なる無能なのか。いずれにせよ、それにより国民は我が国の外交や国際関係について無知なまま放置、あるいはミスリードされている。


本書の要旨、あるいはそれから考えたことを書き殴ったけれど、もしこの通りだったら、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」、こんなことできっこない。

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