歴史は「べき乗則」で動く

rekishiwabekijosokudeugoku.jpg 昨日は、ブキャナン「市場は物理法則で動く」をとりあげた。
同書を読んだあと、この著者の名前に見覚えがあると思ったら、以前に同じ著者の「歴史は『べき乗則』で動く―種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学」という本を読んでいた。「市場は…」よりかなり前に読んだので、ちょっと記憶はあやしいけれど、少し感想を書いてみる。

べき乗則というのは、砂粒を一つずつ落としていったとき、だんだん山になってくるが、あるときは砂粒が山の斜面を転がり落ち、またあるときは雪崩となって山が崩れたりする現象において、雪崩の規模と発生頻度の関係が、たとえば規模が2倍になると頻度が1/2になるというような関係が見られることを言う。このような現象は、たとえば砲弾が爆発したときの破片の大きさとその数でも観測されるし、地震の大きさとその頻度でも観測される。

この本の著者は、「臨界状態」にあるものについては普遍的にべき乗則が見られると主張し、生物の歴史において数度見られる大量絶滅は、彗星・隕石の衝突などの天変地異を持ち出す必要はなく、ちょうど破滅的な大地震同様、べき乗則に則る現象においては、特別な要因がなくても起こるものであると言う。

何より、この本の書き出しは、オーストリア皇太子暗殺事件から第一次世界大戦が始まったことについて、その小さな事件が原因ではなくて、「臨界状態」にあった国際情勢においては悲劇的な大惨事が起こることも不思議ではないという話から始まるのである。

著者は、べき乗則は普遍的だと言い、したがって地震予知はできないし、大恐慌も予知できない、恐竜絶滅の原因を求めても得られない、というような主張を展開するのだが、それで終わっては身もふたもない。
また、カウフマンの生物ゲームをとりあげて、複雑系というのは良いとしても、カウフマンの値打ちは自己組織化という考え方で生物の起源を提示したことだと思う(⇒スチュアート・カウフマン「自己組織化と進化の論理」)。

あんまりなんでも複雑系と言われると、なんだか、乱数列に一定の操作をすればべき乗則が得られると言ってるような話に聞こえてくる。(乱数に一定の操作をしたら正規分布が得られるだろう。)

複雑系というのがつまらない話なのではない。複雑系だと言って終りにしてはいけないと思う。
昨日の「市場は物理法則で動く」でも書いたけれど、複雑系の挙動を調べ、豊かな結果が得られている、それを自然現象や社会現象において、数学モデルをつくるときに活かせば良いということである。

ところで、べき乗則の一番きれいなところはスケール不変性だと思うのだけれど、こういう性質はフラクタルとかにも通じるわけだけれど、そこには何らかの再帰的な構造、フィードバック・ループがあるんじゃないかと感じる。
それが何なのか、やっぱり次のステップが欲しい。

bekikansu_form.jpg で、この本の感想だけど、複雑系のモデルがあてはまりそうな現象はたくさんある、それはよろしい。ただし「種の絶滅から戦争までを読み解く」というのは言い過ぎというか、実は読み解けてないのではないか。

「知の欺瞞」(アラン・ソーカル)と言っては言い過ぎだろうけど。


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