待鳥聡史「代議制民主主義―「民意」と「政治家」を問い直す」

machidori_daigiseiminshushugi.jpg 今日は参議院選挙の公示日(投票日は7月10日)である。

参議院というのは、巷では存在意義がどうのとかいろいろ批判もある。私は以前、参議院について意見を書いたことがある。その意見は今もそう変わっているわけではなくて、ねじれで何が悪い(それも民意)、一票の格差それがどうした(衆議院と同じ原理で選んでどうする)、やっぱり「良識の府」としての存在価値を発揮してもらいたい。

とはいうものの、例のフランス革命時に言われたという「上院が下院と同じ意見なら上院はいらない、上院が下院と異なる意見なら上院は邪魔だ」という論理があるから、二院制の意義をもう少し考えてみても良い。

歴史的には、二院制とは、貴族院と平民院の対立が前提となっていて、フランス革命時に二院制を否定=平民院(国民公会)を唯一の議決機関にすることは自然だったと思う。しかし、米国のように貴族がいない国をはじめ、二院制を採用している国は結構多い。

本書「代議制民主主義」では、どちらが良いかという問題に答えるわけではないけれど(いろんな政体を比較するのが本書のメインだろう)、米国の二院制の起源について説明があった。

米国は独立後まもない間は、まだ合「州」国ではなく、各独立植民地が「邦」として存在し、連盟規約はあったものの、それぞれ「邦」の利害が優先していて、一つの国としての結束は弱かったという。そして、この状態では、独立革命を成功させたことが水の泡になるおそれがあり、合衆国憲法が制定される必要があったという。
この時、「邦」の利害と「合衆国」の利害を調整できる体制として、大統領、上院、下院が考案されたということらしい。
大統領は任期4年で、間接選挙とはいうものの合衆国民の代表、上院は任期6年で州の代表、下院は任期2年で選挙区の代表という考え方で、それぞれ代表と想定されている集団(選出母体)が異なっている。また、上院は連邦の長期的政策を、下院は短期的問題解決を担うという、役割分担があって、それは選出方法の性格に沿ったものだという。

もちろん、現在の米国でこれがこの通りに運用され、機能しているわけではないだろうけれど、なぜ上下両院があるのかということについては、なんとなく腑に落ちる説明だと感じた。

inin_sekinin_chain.jpg もっとも、この本は読んでいて、とてもわかりにくい、というか何を主張しているのかピンとこない。
「序章」に、代議制民主主義の基本構造として「委任と責任の連鎖」という図解があって、基本にこれが押さえられているのだろうけど、というかそれを常に頭において読まなければならないのだろうけど、なかなか頭に入ってこない。
腰巻に書かれている「この国の政治はおかしいと思う、すべての人へ」には答えてない、少なくとも私には、本書に書かれている政体論とかに答えを見出すことはできなかった。

とくにわかりにくい印象をもったのは、著者は解りやすくしたつもりだと思うけれど、代議制は自由主義と民主主義の両方から異なる要請があるなかで生まれたという点。
著者が言う自由主義は、エリートの競争と相互抑制の下での意思決定メカニズムだという。たしかに歴史的には絶対権力からの自由、つまり王様に対する諸侯の自由から生まれたもののようで(それはマグナ・カルタの歴史)、片や民主主義は意思決定の原理だという。
言葉の定義だけの問題かもしれないが、私は議会の歴史としては首肯できるけれど、自由主義という言葉を使うことに違和感も感じる。

これだけでは理念的で、私にはイメージできないので、古代ローマの皇帝、元老院、市民の関係のようなものを思い浮かべていた。塩野七生氏が言う、ローマの主権者は元老院と市民であって(S.P.Q.R.)、皇帝はその両者の信任により成り立つ地位であるという話である。

政体が歴史的に形成されることは当然としても、歴史性で説明しても一般解としては納得できるものではないと思うがどうだろう。

本書ではいろいろな政体について考察されているのだけれど、政党政治が基底にあるのなら、どんな政体になろうと、決定される国家意思に違いが出てくるようには思えない。大統領であろうが、首相(議院内閣制)であろうが、政党が力を持っていたら同じ結果になるような気がする。著者は、中国のような一党独裁についてはどう考えているのだろう。
もっとも、近年は「支持政党なし」が最大のようだから、政党は一部謀略集団程度なのかもしれない。

だとするとますます参議院の意義は大きい?


本書の序章では、「熟議民主主義」という言葉も出てくる。著者は代議制に対するもののようにとらえているみたいだけれど、私にはこちらの方が未来を展望させるように思えてならない。

「熟議民主主義」についてはいろいろ本も出ているようだから、また読むことがあったら感想をアップしたいと思うけど、参議院について書いたことに近いように思う。


蛇足だが、著者は政治家はアマチュア、官僚はプロフェッショナルとしているけれど、日本の官僚は行政のプロだけれど、執行のプロではないと思う。本当に執行のプロだったら、ポリシーのかけらも感じられない、パーフォーマンスの悪い、でたらめな制度設計なんてしないだろう。

1000億円の予算があったら、10億円でできることでも1000億円かけるのが官僚というやつらしい。


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