古楽器~礒山氏の推薦盤(続き)

礒山雅「モーツァルト」の最後に掲載されている推薦盤のうち、3つのCDを購入し、そのうち2つについては、昨日感想を書いた。今日は、その残り1枚について。

Les_rondos_Ogura.jpg ■輪舞(ロンド)~モーツァルトの輝き~
  ソナタ第8、9、11番、2つのロンド 小倉貴久子

作曲当時のA.ヴァルター1795年モデルの名器を使用したという演奏。
収録曲は、
  • クラヴィーア・ソナタ(第9番)ニ長調 K.311 (284c)
  • ロンド ニ長調 K.485
  • クラヴィーア・ソナタ(第8番)イ短調 K.310 (300d)
  • ロンド イ短調 K.511
  • クラヴィーア・ソナタ(第11番)イ長調 K.331 (300i)
    『トルコ行進曲付き』

礒山氏はKV310の短調のソナタの演奏に対する推薦盤とされていたけれど、素直に先頭から、つまり、KV311から聴きはじめた。
ピアノが古いというだけで普通の演奏、特に驚くこともなく、これも古楽器を使っていることをセールスポイントにしただけかと、ちょっと残念な気持ちになった。

古いピアノの音(CD)はいくつか聴いているけれど(たとえば、前にやはり古楽器で演奏された協奏曲)、なんだかガチャついた音で、音量が小さくても騒がしい質感がする。
このCD、つまりワルターのピアノもその例に漏れず、ガチャついた感じがする。とくに、無理にフォルテを出そうとすると、強い音ではなく、騒がしい音と感じる。

ところがどうだろう、KV310、礒山氏推薦のこの演奏を聴くと、がらりと印象が変わった
この曲については、やたら悲壮感を強調し、悲嘆にくれるというか、激情をぶつけるような演奏が多いと思うけれど、そういうものとはかけ離れている。
小倉氏は、随所に装飾音を加えていて、それが心地よい不意打ちで、また趣味の良いものである。そして、多くの演奏のような劇場にかられたようなフォルテではない。前に書いたように、ピアノの古楽器の場合、ガチャついた音で、フォルテは騒がしいと思うのだけれど、この演奏では、もちろんフォルテ/ピアノの交替は明確なのだけれど、全然騒がしくならない。

礒山氏は息をのむような演奏とおっしゃるのだけれど、その意味がわかる気がする。
(昨日、礒山氏は日本人演奏家のものを優先しているのではないかと書いたけれど、このCDの解説は礒山氏が書いているから、ひょっとしたら御本人にもなにがしかの実入りがあるのだろうか。)
私もこのCDは推薦盤としたいと思う。

whenpianobecamepiano.jpg 現代ピアノだと、こういう弾き方にはならないのじゃないだろうか。
良くいわれるようにストロークが深い現代ピアノでは、この演奏のような装飾音は、演奏可能ではあるだろうけれど、このような軽々とした音にはならないように思う(触ったことがないからわからないけれど)。
つまり、この演奏とこのピアノはマッチしていて、というか、このピアノに対してはこの演奏に必然性があるようにまで感じてしまう。

昨日とりあげたフラウト・トラヴェルソの演奏は、この楽器とは思えないキビキビした動きだと書いたけれど、音は若干ひなびた感じはするものの、やはりフルート族である。

フルートも管の材質で音が変わるが、メインは空気振動であり、管体の振動の影響は小さいから、材質が変わってもそう大きな違いではない。それに音の違いといっても、必ずしも優劣、安い材料だからチープな音というわけではないと思う(高い楽器が買えない貧乏人の科白)。


しかし、ピアノ(モーツァルトの時代ならクラヴィーア)となると、筐体も、アクションも、弦も、随分変わっている。
ピアノはいつピアノになったか」という本がある。これには、昔の復元ピアノによる演奏のCDも付録でついているけれど、音色というのはずいぶん違う。
初期のものは現代ピアノより、ハープシコードに近い音がすると思う。

これは筐体の差だと思う。初期のピアノは、現代ピアノのような鋳鉄製のフレームではなくて、ハープシコードの筐体に似たものだったのではないだろうか。それに弦も、現代ピアノの強い力で張られたコイル状の弦ではないだろう。
アタック時はともかく、その後は、弦自体と筐体の響きが問題になると思うから、ハープシコードに近い音になるのではないだろうか。


c0039487_22583929.jpg そして、たいていの曲は、現代ピアノの、深くて広い音のほうが気持ち良い。
こうも思うのだ。
もし、モーツァルトが現代のスタインウェイとかベーゼンドルファーと、あるいはヤマハのピアノを知ったら、モーツァルトは大いに気に入るのではないだろうか。モーツァルト自身は、足鍵盤付きのピアノを持っていて、低音補強をしていたらしく、豊かな音を好んだのではないだろうか。なにより、性能の高い新しい楽器―たとえばクラリネットを好んだということもある。新し物好きだったのでは。

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