過労死と電通「鬼十則」

s_ice_screenshot_20161107-110222.jpeg 電通社員の過労死(自殺)がクローズアップされている。
一言で言えば、酷い会社である。あまりにも前近代的で、労働生産性の低い、効率の悪い最低の企業である。
苛酷な労働というが、無駄に苛酷、つまり苛酷さが自己目的化していたのでは。言い換えれば、全社イジメ体質だったのでは。

この会社は、仕事の成果と投入する労働の関連について、何の分析・評価もせず、生産性の低さに問題意識を持っていなかったに違いない。
およそ、科学的経営ということを知らない田舎企業と言われてもしかたがない。
それを見直す機会は、いくらでもあったはずである。まして、この会社は二十数年前にも社員の過労死自殺を起している。
それをしなかったのは、仕事というのは厳しいものだという観念に凝り固まり、厳しいということに安住、自己満足していたからではないだろうか。

十数年前、私も所属課の人事担当を仰せつかったことがある。
課員の異動、勤怠管理、健康管理、セクハラ相談(だれも相談にこなかった)など。

人事担当になると、いろんな研修を受けさせられる。
健康管理、とくにメンタルヘルスや過労死問題もテーマになっていた。
過労死問題の研修では、当時でも既に、過労死認定があれば補償は1億円を超える時代になったということが解説されていて、その兆候に早く気付くことが人事担当には求められていた。
もちろん私がいた職場でも、残業の多い職員は結構いたけれど、過重労働という問題にまではなっていなかった(メンタル面でちょっとというのはあったけれど)。

こういう労働安全衛生について考える機会が与えられたなら、成果の上がる働き方を追求するのが真っ当な会社というものである。

 電通鬼十則
 一、仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
 二、仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
 三、大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
 四、難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
 五、取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
 六、周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
 七、計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
 八、自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
 九、頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
 十、摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。
ところで、この事件に関連して、有名な電通の「鬼十則」についても、厳しいルールだという取り上げ方がされている。この「鬼十則」は、私が前いた会社でも良く知られていて、ある人は厳しいルールだという評価をしていたけれど、また別の評価もあった。
たとえば、

  • 「仕事は自ら創る」というのは、押し付けられた仕事より、自分がやりたいことをやる方が楽しいと考える。
  • 「先手先手」というのは、守りに入るより、攻めるほうが、主導権を持てる分、負担が少ない、という意味。
  • 「周囲を引きずり回せ」というのは、何でも自分でやらず、他人の力をうまく使って成果を上げるという意味。

「鬼」とついているから厳しいように感じるけれど、こう考えれば、仕事を楽しく、少ない負担で成果をあげるという意味にもとれる。

そもそも、頭脳労働というか知識労働というのは、時間に縛られるようなものではない。若い頃、上司から、「24時間考えろ」と言われて、「それじゃ寝る時間ありませんよ」と抗弁したら、「夢の中でも考えるんや」と言われた覚えがある。
また、あるとき、六二郎さんはいったいいつ仕事をしてるんやと言われたこともある。職場では本を読んだり、馬鹿話をしたりしていて、普段、手を動かしている時間が少なかった(「雑用」もそれなりにあったけれど)。もちろん、要所要所の企画書や意思決定資料はきちんと用意したし、年度末などには報告書一冊をきちんと書き上げていたわけだけれど。

どんな仕事でもそうだというつもりはないけれど、たとえば、何か企画をまとめようというときは、手を動かす時間はそう多くない。企画書というのは簡潔・明瞭にまとめられているべきで、短いほうが良いものである。問題は、ビジョンをどう熟成させるかであり、時間をかければ、まして残業すれば出来るものではない。それに至るまでに、それを根拠づけたり、補強するための資料収集と、利害関係者の理解など、手順はいろいろあるけれど。

なにより、これらの作業こそ、チームでやるもの。私は書き手役が多くて、関係者を説得(強請)するのは上司にまかせたし、資料の収集や整理は周囲が気を利かせていた。

そして、ああでもない、こうでもないとぐるぐる頭の中を回っている間に、考えが練れてきて、ビジョンが固まる、そういうものではないだろうか。

資料作成では、ドラフトができるまでが勝負であって、それができたら、あとは頭脳労働というより、職人仕事になる。そして、これはある程度、時間でも測れる仕事になる。ここまでくれば、経験の浅い社員でも十分できるし、優秀な人材なら、ここに至るまでの過程からノウハウを身に付けることもできると思う。

この会社は、効率的に成果をあげるだけのノウハウを社内で共有できていないのか。
日本の時間あたり労働生産性は先進国中でも最低ランクである。これは同じ成果を出すのにかける労働時間数が多すぎるからだ。おそらく、一人当たりの産出は他国より多いぐらいなんだろうけど、それにかける労働時間が多すぎるのだ。

この社員は「きみの残業時間はすべて無駄」と言われていたという報道もあったけれど、ただ時間をかけても能率が上がらないから切り替えようとか、ビジョンを組み替えたり、ヒントを与えたり、そういう指導はできなかったのだろうか。まして経験の浅い社員相手である。
「鬼十則」を本当に深く考えたのだろうか。(私の読みが違うのかもしれないけれど)
同じ金言でも、適用する環境や社員の能力によって、読み方が真逆になってしまう、そういうことかもしれない。

上司・指導する側の能力不足だったんだろう、そんな奴がエラそうに言うな。
失われた命の重さをきちんと受け止めて、繰り返されないことを祈る。

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